もくじ
はじめに
第1回では「女性のからだ」について、特に月経周期について説明しました。
月経周期は生殖のために必要なサイクルです。毎回、これから生まれてくる赤ちゃんのために毎回ベッドと布団を作っているのです。
しかし、そのベッドと布団も「黄体」がエストロゲン、プロゲステロンを分泌することで維持されていました。そして黄体には寿命がある、ではなぜ、妊娠するとベッドと布団である子宮内膜の維持、つまりはエストロゲンとプロゲステロンのホルモンは維持されるのでしょう?そこについて説明も説明を交えていきます。
受精

自然な妊娠成立のお話をしましょう。妊娠するには、性交渉(SEX)が前提となります。卵子は排卵して24時間が寿命でしたが、精子はそれよりも長い48〜72時間(2〜3日)です。
男性側、精子のお話からしましょう。SEXの際に膣内に精液が射精されます。その精液の中には4〜2億個の精子がいます。膣から子宮に入れる精子は、2〜1万個です。そして卵巣への道でもある卵管までたどり着くのは600〜400個、卵管から卵巣に近い部分、卵管膨大部までたどり着けるのは、200〜60となります。シビアですね。
女性側の卵子は、排卵によって卵巣から排出された卵子は、卵管采という部分に捉えられて卵管へ引き込まれます。そして引き込まれるとすぐに卵管膨大部という所にたどり着きます。そこにはもうすでに精子たちが待っているかもしれません。
200〜60の精子は1つの卵子をめぐ、競争します。なぜなら通常は卵子と受精できるのは1つの精子だけだからです。
1個の精子が卵子のなかに侵入すると、それ以外の精子は卵子のなかには侵入できません。1匹の精子と1個の卵子、それぞれの遺伝子情報が集まった核が融合します。これで受精の完了です。受精が完了すると、すぐに細胞分裂が始まります。
着床
受精した受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、受精卵のために用意されたベッドと布団である子宮内膜がある子宮へ向けて、卵管膨大部から子宮へ向かいます。子宮内膜にたどり着くと、受精卵は内膜に潜り込み、成長を始めます、これが着床です。この受精から着床までにかかる時間は受精後6〜7日かかり、完了するまでに12日くらいかかります。まだ黄体は寿命は迎えていない頃です。
受精卵は着床の中で、赤ちゃんとお母さんを繋ぐ胎盤というものを作り始めます。そのでき始めた胎盤がhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンを出し始めます。このホルモンがポイントです。このホルモンは、黄体の寿命を延ばす働きがあります。このホルモンが黄体を刺激することによって、黄体は寿命を迎えずにエストロゲンとプロゲステロンは維持されます。また、このホルモンは全身を巡りますから、妊娠4週頃からこのホルモンが尿中にも検出されます。そのホルモンが検出されているかで、妊娠を判定するのが、薬局でも見る妊娠検査薬です。ただし、胎盤は成長すると自分でエストロゲンやプロゲステロンを分泌できるようになりますので、妊娠8〜10週をピークにとhCGの分泌量は急激に下がります。hCGは胎児や母体にも作用しますので、妊娠中は全く分泌されない、ということはありません。hCGの分泌が少なくなると、黄体は白体へ退縮します。

エストロゲンとプロゲステロン
エストロゲンとプロゲステロンは、子宮内膜だけに作用するわけではありません。妊娠中も妊娠・出産・産後に向けて妊娠した女性の身体を変化させます。
エストロゲンは、子宮に対してはこれから大きくなる胎児(赤ちゃん)のために、子宮を大きくし、また子宮の血流を良くします。産後に母乳が出るように、母乳の通り道である乳管を増やし、下垂体に作用し「プロラクチン」というホルモンを分泌させます。このホルモンは乳腺の発育と乳汁分泌の作用があります。ただし、妊娠中はプロラクチンはエストロゲンによって、乳汁分泌は起こらないようにします。
プロゲステロンは、妊娠中に排卵が起こってしまわないよう、排卵を促すホルモンであるLHの分泌を抑制します。また、乳腺の発育に作用しますが、こちらもプロラクチンが乳汁を分泌させないように作用します。プロゲステロンはそれ以外にも様々な場所で作用します。
プロゲステロンは、平滑筋という筋肉を弛緩させる効果があります。子宮も平滑筋でできていますので、弛緩することで子宮は伸びやすくなります。ですから、鶏卵サイズの卵の大きさの子宮が36cmまで大きくなれます。妊娠すると、母体(妊娠した女性)にも胎内の赤ちゃんの胎盤に向けても血液をたくさん送らなければいけないので、血液量が増えます。血液量が増えると、血管に入る量が増えて圧力がかかる、つまり血圧が増えそうなのですが、この血管も平滑筋でできていますので、プロゲステロンの作用で血管が弛緩し、拡がりやすくなることで、血圧は妊娠前と変わらない、むしろやや低下するのが正常です。
このように重要な作用があるプロゲステロンですが、このホルモン作用が時にはトラブルを招きます。それが消化器です。月経前に便秘になる方はいらっしゃいませんか?それは、プロゲステロンが、平滑筋でできている胃腸の動きを悪くするからです。妊娠中はプロゲステロンの作用が続きますから、便秘になる方が多いです。子宮も大きくなって圧迫することも原因なんですが。それ以外にも腎臓と膀胱を繋ぐ尿(おしっこ)の通り道の尿管も弛緩することで、尿が停滞して感染の原因になることもあります。

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