第5回 妊娠④ 妊娠期の栄養-1

はじめに

 「妊娠すると、赤ちゃんの分も食べないといけないから、2人分…。」

 なんて昔はCMでありましたが、2人分も食べていると明らかに体重が増えすぎです。過剰な体重増加は妊婦さんの身体に負担がかかり、高血圧や糖尿病のリスクが上がりますし、赤ちゃんが同じ週数の子たちと比べて大きくなり過ぎて分娩時に負担がかかってしまうリスクも上がります。
 「じゃあ、増えない方がいいのかな?体型が変わるのが嫌だから」と、食事を制限し過ぎて妊娠期に体重がほとんど増えない場合、お腹にいる赤ちゃんは低栄養の状態で体重も増えず、赤ちゃんの同じ週数の子たちに比べて小さく産まれてくることも
 妊婦は「体重が増え過ぎてもダメ、増えなさ過ぎてもダメ」というなかなか難しいミッションを乗り越えて行かなければなりません
 ですが、妊娠している女性も、妊娠していない女性も、男性も子ども、おじいちゃんおばあちゃんもバランスの良い食事は必要です。医師から止められていなければ適度な運動も必要です

なぜ体重は増える必要があるの?

全妊娠期間の中で生理的体重増加量の平均値は約10kg。
その理由として、胎児及び付属物(羊水や臍の緒、胎盤)や子宮の増大に加えて、乳房の増大、循環血液量や体液量の増加、皮下脂肪の貯留が考えられます。
乳房の増大」これは、出産後の母乳育児に向けて乳房が乳腺を発達させたりと準備をしているからです。しかし、「皮下脂肪の貯留」と聞くと、嫌だなと思われるかもしれませんが、その脂肪は産後の母乳産生時に使用されます。

どれくらい体重は増えたらいいの?

妊婦さんは一律「妊娠期間内に●kg増加です。」と言えたら正直楽なのですが、実は妊婦さんの非妊娠時(妊娠していない時)の体重から計算される『肥満度』によって推奨体重増加量は違います。
「やせ」「ふつう」「肥満」の判断には、BMI(体格指数)という計算式を使います。

実際に計算してみましょう。

身長(cm):

(非妊娠時の)体重(kg):

BMI:  0


BMIが18.5未満の人は「やせ」

BMIが18.5~25.0未満の人は「ふつう」

BMIが25.0以上の人は「肥満」となります。

<BMIが18.5未満 「やせ」 の場合>
全妊娠期間に9〜12kg体重が増えることが望ましいです。
1週間の体重増加の目安は妊娠中期〜妊娠後期における0.3~0.5kg/週が望ましいでしょう。2017年に発表されたMorisakiらの研究によると、非妊娠時のBMIが17.0~18.4の妊婦さんで周産期異常の少ない至適体重増加量は、12.2kgというデータが示されたことから、やせの妊婦さんは12kgくらいは体重が増加した方が良いようです。

<BMIが18~25.0未満 「ふつう」 の場合>
全妊娠期間に7〜12kg体重が増えることが望ましい。
のですが!先ほどのMorisakiらの論文によると、
非妊娠時BMI18.5~19.9の至適体重増加量は10.9kg
非妊娠時BMI20.0~22.9の至適体重増加量は9.9kg
非妊娠時BMI23.0~24.9の至適体重増加量は7.7kg
とBMIが「やせ」に近い人は、推奨体重増増加量の上限側(12kg)に近い範囲を、「肥満」に近い倍位には、推奨体重増加の下限側(7kg)に近い範囲への体重増加が周産期異常のリスクを下げることからも望ましいと考えます。

<BMIが25.0以上 「肥満」 の場合>
個別対応となります。Morisakiらの論文では、
非妊娠時BMI25.0~27.4の妊婦の至適体重増加量は4.3kgとありました。
しかし、それを著しく超える体重の妊婦さんもいらっしゃると思います。
しっかりと産婦人科の先生や看護スタッフ、栄養士さんと相談しながらなるべく母子ともに健康に近い状態でいられるように栄養管理される方が良いかと思います。
(自分で書いていて耳が痛い)

今日はちょっとここまで、次回の投稿で、「必要摂取カロリー」や「必要栄養素」についてのお話をしていきます。

・参考文献

ペリネイタルケア 第37巻10号(メディカ出版) 
特集「妊婦のやせ・肥満保健指導と分娩管理」

http://barutangne.hatenablog.com/entry/2014/01/10/215304
(BMI計算式 閲覧日:2019年10月9日)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/27/10/27_JE86/_article/-char/en
(Morisakiらの研究 閲覧日:2019年10月9日)

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