
もくじ
はじめに
これまで多くの赤ちゃんに接してきました。1000g未満の子もいましたし、大きい子は生まれながらにして4500g over、、、どんな赤ちゃんでも可愛いです、愛おしい。比較的大きく産まれた子たちの泣き声が野太いな、とは感じますが(笑)
助産師をしていて嬉しいのは、そんな赤ちゃんと触れ合うことができることです。
ところで、「赤ちゃん」はちょっと専門的な用語の定義をいうと、
胎児は生まれると「乳児」になりますが、そのうち生後28日未満は「新生児」と呼ばれます。28日以降は「乳児」となり、「乳児」と呼ばれるのは1歳未満の子を指します。(母子保健法より)
「この新生児可愛いわ〜」「この乳児マジ可愛い〜」というと可愛さが半減してしまうので、赤ちゃんという慣れ親しんだ言葉でいいのですが、なぜ赤ちゃんと言うのでしょう?今日はちょっとコラムな感じからお話していきます。
赤ちゃんは赤い
そもそも生まれた赤ちゃんは、「赤い」のです。新生児の皮膚の表皮は非常に薄いので、血液の色がよく見えるのです。だから赤ちゃんなのです。
私たちの血液は酸素を多く含む血液は赤く、酸素が少ない血液は紫色に見えます。
生まれてすぐに赤ちゃんは泣きます。赤ちゃんは生まれるまでは自分の肺でガス交換はしません、胎盤を通じてママの血液から酸素を貰っているのです。
しかし、生まれて泣くことで肺に空気が入り、自分の力でガス交換(二酸化炭素を排出し酸素を取り込む)を始めます。
最近、突然話題になった血液クレンジングなんてしなくても、私たちは肺でガス交換、血液を紫から赤に変化させることができます(笑)
泣くと血管が拡張して真っ赤になりますし、暑い環境(例えば保育器に入る)にいることで皮膚温(表面の温度)が深部温度(内臓など身体の内部の温度)に比較して上昇しすぎても赤くなります。
でも途中で黄色くなります。

赤ちゃんは生後2〜3日ごろからだんだんと黄色っぽい皮膚になっていきます。これは、赤ちゃんの血液中に増加した「ビリルビン」という物質によって皮膚や粘膜に移動するためです。
これを「黄疸」と言います。
なぜ黄色くなるのか、と言いますと、
①赤ちゃんの赤血球の寿命が大人に比べて短い
(大人が120日に対して赤ちゃんは60~90日)
②赤血球の量が多い
③まだ肝臓の機能が未熟
④腸管に排出されたビリルビンが再び吸収されやすい。
だからです。黄色くなる原因の「ビリルビン」という物質は、赤血球を壊す過程で産生されます。「ビリルビン」は肝臓で処理されて腸へ運ばれますが、肝臓の処理能力が低いので、うまく体外に排出されません。そして腸に運ばれたビリルビンが再び吸収されてしまう割合が高いことも新生児の特徴であります。
多くは「生理的黄疸」というもので、治療の必要はなく5〜6日をピークに低下して、2週間以内に自然消失します。
実は日本人の赤ちゃんはこの黄疸はよくみられます。というのも、日本人は黄疸になりやすい遺伝子を持っている人が多いのです。なのでこれから話しますが、日本人を含む東アジア地域では、ビリルビンが基準値より高くなる「高ビリルビン血症」になる頻度は、白人の2倍、黒人の3倍と言われています。たまに白人や黒人の方が出産されますが、その子(新生児)たちはビリルビンの値が日本人の新生児より低いです。
黄疸は治療が必要な場合がある
この生理的黄疸については、日数や出生時の体重による基準値があり、その基準値を超えると「高ビリルビン血症」という診断がつき、主に「光線療法」という治療をします。なぜ基準値が決められており治療の必要があるか、と言いますとそのままどんどんビリルビンが増加してしまえば「核黄疸」という症状を起こす可能性があるからです。
核黄疸はビリルビンが脳の大脳基底核という場所まで届いて障害を起こします。核黄疸が疑われて適切な治療をしないと後遺症を残すことがあるのです。
日本では、入院期間が長く入院中にスタッフさんが、「経皮的ビリルビン測定機器」で毎日チェックしていますし、ルーチンによる血中のビリルビン測定などを行うことで、ほとんどは早期に発見されています。
光線療法とは、赤ちゃんの皮膚に光を当てます。この光によるエネルギーが水に溶けないビリルビン(間接ビリルビン)を水に溶けるビリルビンに変化させて、肝臓や腎臓からの排泄を促し、より多くの間接ビリルビンが処理されることでビリルビンを低下させます。
この光線療法は、赤ちゃんの服とベッドが一体化して、ママと一緒にいたまま治療ができるタイプと、保育器に入れて赤ちゃんがアイマスクをして保育器の外からブルーのライトを当てられる方法があります。病院・クリニックにベッド型の保育器があるかなどによって、保育器に預かることがあります。
ママはこうなってしまったことで自分を責め、泣いちゃうことが多いのですが、
先ほども言った通り、日本人は黄疸が出やすいのです。また血液型などでも出やすくなることがありますが、適切な治療が行われてば問題ないですよ。
また、
「母乳で黄疸が強くなるんでしょ?」
と勘違いされている方がいるので、ちょっと説明させてください。
たまに医療者でも勘違いしているので正直どつきたくなるのですが、
母乳は与えて問題ありません。
むしろ、私はどんどんあげてくれ、と言いたいくらいです。
まず、母乳で黄疸が強くなるのではなく長引くことがあります。先ほど「黄疸は2週間で消失します」と言いましたが母乳育児の子たちは黄疸がなかなか消失しないことがあります。それを遷延性黄疸と呼ぶのですが、その中に「母乳性黄疸」が入っています。それも基準値に達していなければ問題がありません。
ただし、母乳分泌が追いつかず、赤ちゃんの体重減少が進む(脱水)になるとビリルビンも高くなります。光線療法でさらに脱水になりやすいですから、赤ちゃんの脱水を防ぐためにミルク(人工栄養)が与えられることがあります。
お母さんの母乳がしっかり出ているならあげていいし、母乳分泌を維持するならばおっぱいは吸わせた方がよいのです。母乳は人工栄養に比べると消化がいいので、うんちが出やすいです。ビリルビンはうんちやおしっこに排泄されていくので、そう言った点からも母乳が勧められます。

この治療でビリルビンが排泄されることで、赤ちゃんのおしっこやうんちが緑っぽくなりますがそれはビリルビンが排泄されているということなのでいいことです。
ちょっと注意したい黄疸
ただ、黄疸の中でも注意したいものがあります。黄疸が生後24時間以内に現れる「早発黄疸」と先ほども出ました「遷延性黄疸」です。
私もこれまでに「早発黄疸」を数回見ました。早発黄疸が出る理由は感染や血液型不適合などがありますが「赤血球の形が特殊な形だった」という症例もありました。
遷延性黄疸も母乳性黄疸の場合もあれば感染が原因の場合もありますが、中には胆汁のうっ滞している場合があります。その場合、うんちが白っぽくなります。白っぽいってどれくらいか、というのは実は、母子手帳に「うんちカード」というものがついています。そこにある色と見比べて、白っぽいうんちならば病院を受診し、治療が必要となります。
家に帰ってからも赤ちゃんの体重が減って脱水傾向になればビリルビンが上昇することもあります。「黄色味が強くなっている」「黄色いのがなかなか引かないな。」があれば病院に相談してみましょう。
終わりに
今日は赤ちゃんの由来から、若干強引かもしれませんが、黄疸のお話をしました。
私も35年前に光線療法したそうです。私は末子で3200g級のよくいる感じのベイビーたったのですが、私が兄弟で初めて光線療法されたそうです。まぁこの通り、なんの障害もなく元気です。適切に治療をしていただいたのでしょう。
先ほども述べましたが、日本は黄疸ピークくらいまで入院しますから、「高ビリルビン血症」の発見がされやすいです。ただ、退院しても黄疸も含め気になることがあったら、かかりつけの病院に相談しましょう。

<参考文献>
1)楠田聡 監修『家族への説明に使える!イラストでわかる 新生児の疾患・治療・ケア』,メディカ出版,2010年
2)大木茂編集『見る!聴く!触れる!異常サインをキャッチ!新生児の症状別フィジカルアセスメント(ネオネイタルケア2015年春季増刊)』,メディカ出版,2015年
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