第11回 妊娠⑤ 妊娠中の運動

はじめに

 先週の話ですが、お休みの日にちょっと郵便局まで書留を取りに行ってきました。実は、先々月暗いから歩くと片膝に痛みがあり、痛み止めの注射をしたり、鍼治療に通ったりしていたんですが、そのおかげでなるべく歩かない生活を送っていました。しかし、ここ最近は長時間歩くと軽く違和感がでる程度ですので、久しぶりに散歩してみることにしました。
結果、

朝10時の時点でこれだけ歩いていました。3〜4駅分歩いたのでこれくらいになりますよね。これを言うとみんなに引かれるんですが、

私の散歩ってこれくらいなんですよ。(1.5~2時間くらい歩く)

(なのに痩せないのは、ホント食べ過ぎなんだろうな。)
ホント久しぶりに歩いて筋力低下などから途中具合悪くなるんじゃないかとか思いましたけど、そんなことないですね。そして、この日は最終的に17,000歩歩いたのですが、お尻とお尻に繋がる太腿の裏、腹筋が軽く痛かったです。少しは筋肉使ったのでしょう。
 さて、私は妊娠をしているわけではないので別に運動の制限はないし、むしろ「運動しろ、そして食べるのをもう少し制限しろ」なんですが、妊娠中って運動しても大丈夫?と思う方もいるかもしれません。スポーツの秋、運動しやすい季節になってきましたから、今日は妊娠中の運動についてお話ししていこうと思います。

そもそも妊婦は運動していいの?

 基本的にかかりつけ医師の確認を取ってから、になりますが、妊娠中の運動については医師からの指示で運動を止められていなければ大丈夫でしょう。どのような人が止められるかと言いますと、
・心疾患がある。
・破水している(前期破水)
・多胎(双子や三つ子など)
・切迫早産
・3回以上の流産経験がある
・前置胎盤(子宮口に胎盤が被っている)
が挙げられます。このような人たちは安静指示が出されます。また、元々高血圧の持病があったり、妊娠を機に血圧が高くなる妊娠高血圧症候群(HDP)でも安静指示によって運動できない場合があります。
 また、どのようなスポーツが推奨されるかと言いますと、
・ウォーキング
・自転車エルゴメーター運動(エアロバイク)
・水泳
・エアロビクス
・ヨガ
が挙げられます。逆に避けた方がいいのは、
・バレーボール
・バスケットボール
・乗馬
・スキー
・スケート
・スキューバダイビング(胎児の先天異常や減圧病になるリスクあり)
など転倒や転落、腹部を打ったり水圧がかかりすぎるようなスポーツは避けた方が良いでしょう。
 病院やクリニックによっては、ヨガやエアロビクスを院内で実施しているところもあります。運動経験がない方は、そのような場所から始めるのも良いかもしれません。

運動するとどのような効果があるの?

 妊娠中に定期的な有酸素運動を行うことで、筋力・持久性・柔軟性などの基本的な身体能力が維持または改善されたと言う研究データがあります。また、ストレッチなどの運動療法により、妊娠中のマイナートラブルである腰痛を減らす効果も出ているようです。

 また、妊娠中の体重増加や栄養について第5・6回で説明しましたが、母体(妊婦)の皮下脂肪厚に対する定期的な運動の影響として、ジェームス・クラップ著書『妊娠中の運動ハンドブック』によると、運動した群と運動していない群では、妊娠23~31週では皮下脂肪の差が5mm以上差が出てたとの報告があります。皮下脂肪は母乳を出すうえで必要ですが、過剰な皮下脂肪の蓄積を予防するという点でも有効であるようです。
 また、クラップらの見解では、妊娠期間を通して1週間に3回、20分間、自覚的強度として「ややきつい」〜「きつい」程度のレベルの運動を続けると胎盤の発育や機能を刺激し、このレベルを妊娠末期まで続けると、他のそしてきの発育を阻害することなく、胎児脂肪の過度の蓄積を抑制する、ということです。赤ちゃんが大きくなりすぎないってことですね。このように、妊婦だけでなく胎児にも効果があります。

運動する際のポイント

 運動を実施する場合は、午前10時〜午後2時の間が望ましいです。これは、この時間が子宮収縮が起こりにくいからです。ただ、これが夏など、炎天下になります。炎天下で熱中症になったら大変ですから、自分が実施しやすい時間で良いかと思います。今の季節だったら10時くらいならちょうど良いかもしれませんね。運動の頻度としては週2〜3回、1回の運動時間は60分以内が良いでしょう。私のようにちょっと郵便局まで、と2時間かけて歩くまでの運動量は必要ないようです・笑
 運動の強さについては先ほども出ていましたが、妊婦さん自身が「ややきつい」と思うくらいまでが良いでしょう。運動の強さの目安として、心拍数(脈拍)が150回/分以下が良いです。(脈拍数が10秒間で25回以下)
 
 しかし、無理は禁物です。

運動の中止基準

このような症状が出たら、運動を中止しましょう。

・一般的な体調不良に加え、規則的な腹部膨満感、腹痛、出血などがある。
・収縮期血圧が140mmHg,収縮期血圧が90mmHg以上
・妊娠初期(非妊娠時)より収縮期血圧で30mmHg以上、
 拡張期血圧で15mmHg以上の上昇
・安静時で110回/分以上の頻脈
・運動前に37.5度以上の発熱
・規則的、持続的な子宮収縮、あるいは強い子宮収縮が出現する場合*1
・胎児において、110bpm以下の徐脈が一過性あるいは持続的に出現する場合*2
・胎動の減少や消失

*1
ただし、妊娠37週以降はこの限りではありませんが、
 逆子(骨盤位)や帝王切開既往があり予定の帝王切開がある場合は中止しましょう。
*2
 胎児の心拍はドップラーという装置で聴くことができます。これは胎児心拍装置やドップラーという機械で聞くので、妊婦自身では自覚できません。ただ赤ちゃんは元気がなくなると、胎動が減少したり胎動がなくなることがあります。もし胎児の徐脈が機械で聞いて発見された時点で、医師の診察、場合によっては入院措置が取られます。

終わりに

 肥満の私が運動について書くのはちょっと気が引けましたが・笑 学生時代の資料や雑誌・書籍を参考に記載しました。ちなみに私の友人はダンスを習っていましたが、産休前まで踊っていました、すごい。その結果なのか、元々の体質なのかは不明ですが、第1子安産でした。
 あと、妊婦さんに口酸っぱく言っているのですが、ウォーキングなどで外を歩く際、というか外出する際は、必ず母子手帳を携帯してください。どこで事故に合うかわかりません。お腹が目立てば妊婦とわかりますが、それでも妊娠何週かなんてすぐにわかるものではないのです。母子手帳が大きかったりして持ち歩きにくいこともありますが、万が一のために必ず持ち歩きましょう。

<参考文献>
1)松井浩「特集 妊婦のやせ・肥満保健指導と分娩管理 07 【Topics】肥満妊婦への運動療法」『ペリネイタルケア 』第37巻 第10号,メディカ出版,2018年,p50(946)-52(948)

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