
もくじ
はじめに
『離乳食』、食べない、作るの大変、と聞きます。そして離乳食が進まない子たちが貧血になる、またこれが母乳育児の子たちでよく聞きます。それは何故なんでしょう、そして、離乳ー「乳から離れる」必要があるのでしょうか?今日はそんなお話などをしていこうと思います。
子ども(乳児・幼児)の貧血
乳児・幼児で起こる主な貧血は鉄欠乏性貧血です。どこか臓器からの慢性出血の可能性もありますが、主には鉄分摂取量が足りないことが原因です。
12〜36ヶ月児の9%は鉄欠乏状態にあるといわれています。
鉄欠乏性貧血の症状としては、
①眼瞼結膜の蒼白[ヘモグロビン:6~10g/dl]
②手掌線の蒼白[ヘモグロビン:8g/dl以下]
③いらいら感、食欲不振[ヘモグロビン:5g/以下]
④頻脈、収縮期雑音
⑤異食(症)
⑥無気力、眠りがち
⑦おもちゃ遊びに対する興味の喪失
があります。
貧血は成長発達や遅れなどを合併する可能性があるため必要に応じては内服治療が行われます。そして、母乳栄養児の15〜25%は、生後9〜12ヶ月までに鉄欠乏状態になるといわれています。それはなぜか、下の表をみてください。
母乳と人工乳(今回は液体ミルク)で成分の比較を行いました。
成分名 | 母乳*1 | MilK A(液体ミルク)*2 |
---|---|---|
カロリー | 65kcal | 68kcal |
炭水化物 | 7.2g | 7.1g |
タンパク質 | 1.1g | 1.4g |
脂質 | 3.5g | 3.8g |
ナトリウム | 15.0mg | 15.7mg*3 |
カリウム | 48.0mg | 92mg |
カルシウム | 27.0mg | 41mg |
マグネシウム | 3.0mg | 5mg |
リン | 14.0mg | 32mg |
鉄 | 0mg*4 | 0.4mg |
亜鉛 | 0.3mg | 0.4mg |
ビタミンA | 45μg | 70μg |
ビタミンB1 | 0.01mg | 0.1mg |
ビタミンB2 | 0.03mg | 0.14mg |
ビタミンB6 | Tr*5 | 0.05mg |
ビタミンB12 | Tr*5 | 0.1~0.4μg |
ビタミンC | 5mg | 39mg |
ビタミンD | 0.3μg | 1.3μg |
ビタミンE | 0.5mg | 2.6mg |
ビタミンK | 1μg | 4μg |
*1 食品成分データベース 乳類/人乳 より引用(閲覧:2019.11.02)
*2 https://www.icreo.jp/products/akachan-milk/ より引用
(閲覧:2019.11.02)
*3 ナトリウム記載がなかったため、食塩相当量より算出
*4(食品成分データベースより)食品成分表の最小記載量の1/10未満、または検出されなかった
*5(食品成分データベースより)微量 最小記載量に達していないもの
注目していただきたいのは、「鉄」の部分。母乳にはもしかしたらわずかに含まれているのかもしれない位、ミルクには0.4mg含まれています。
ですが、生後6ヶ月より前にに貧血がみられる子はあまりみられません。なぜなら、生後4〜6ヶ月までは乳児の体内に出生前より鉄が貯蔵されているからです。赤ちゃんは約半年分の鉄分を貯蔵しているんです、すごいですね。
ただ、早産で生まれた子や周産期に出血があった、低栄養状態だった、鉄欠乏状態の母親から生まれた乳児など鉄の体内貯蓄が不十分な場合は6ヶ月よりも前に鉄欠乏性貧血となることはあります。NICUのベイビーたちもよく「インクレミンシロップ」という鉄分補給のシロップ(薬)を飲んでいました。
栄養を補う「捕完食」
「じゃあ、うちの子母乳ばかりだけど、ミルクをあげた方がいいの?」
と前文までに思ったならばそれは誤解です。その足りない栄養を補うのが、
離乳食なんです。
「離乳とは、成長に伴い、母乳またはミルク等の乳汁だけでは不足してくるエネルギーや栄養素を補完するために乳汁から幼児食に移行する過程をいい、その時に与えられる食事を離乳食という。」
授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)
と定義があり、WHO(世界保健機構)では「Complementary Feeding」 、「Complementary」とは「補足的な」という形容詞で、「補完食」と訳されることがあります。
「離乳」と書くと誤解が生じやすいですが母乳から離れるための食事ではありません。足りない栄養を補う目的が離乳食である、ことをしっかり頭に置いてください。
離乳の開始
離乳食の開始時期の子どもの発達状況の目安としては、首のすわりがしっかりして寝返りができ、5秒以上座れる、スプーンなどを口に入れても舌で押し出すことが少なくなるようになってからです。月齢としては5〜6ヶ月でしょうが、早産であったり、成長がゆっくりな子もいて個人差があります。子どもさんをよく観察し、「食べたがっているサイン」に気が付くように、、、ってガイドには書いてあります。
「食べたがってるサイン」ってわかるかな〜と思ったんですが、9月に友人の子(5ヶ月)に会ったのですが、
私たちが食べてるのをめっちゃ見てました。(笑)
「あ、これもう離乳食初めて良さそう。」と思っていたら、1〜2週間後には「ずっと食べてるの見てるんですよ、早いけど始めました。」と連絡があり、離乳食を食べ始めたとか。
また、離乳の開始は「なめらかに潰した状態の食物を初めて与えたとき」であり、野菜スープや重湯などの離乳準備食も必要ありません。

先ほども述べたとおり、離乳食は栄養を補う必要があるため、おかゆだけでは栄養は補えません。おかゆが食べれないからと、おかゆで止まっていると栄養が不足してしまいます。なめらかにすりつぶした状態ならパンでもじゃがいもでもバナナでもいいと思います。(そもそも、米が主食の文化の国は少ないです。)そこに慣れてきたら、野菜や白身魚や肉、卵黄をすりつぶした試していくと良いでしょう。
お肉を使った離乳食レシピをツイッターに掲載されている先生がいらっしゃったので、拝借させていただきました。
もし、それでもなかなか離乳食を食べてくれないのであれば小児科や行政の保健師さん・助産師さん、栄養士さんと相談していくとよいかと思います。「母乳をやめたほうがいいのかな?」「食べていないから、ミルクを足そう」と安易に母乳を中止したりミルクを補足するのではなく、相談することで子どもにとってよい方法がないか食べさせ方や味の工夫などが見つかるかもしれません。
授乳・離乳の支援ガイド
厚生労働省のホームページに授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)が公表されています。これは保健医療従事者向けとなっていますが、誰でも閲覧することはできます。授乳についてだけでなく、離乳食について参考になることがたくさん載っています。

ベビーフードについて
「離乳食、めんどくさい。」
2歳児と乳児を持つ友人がぼやいてきました。
「家族用のご飯作って、離乳食つくって、、、その離乳食をひっくり返されてごらんよ。つらいよ。だから、離乳食したくない。」
って言ってきたのですが、空気を読まない私は、
「え、そんなんやったら私全部ベビーフードにするわ。それやったらひっくりかえされても『ベビーフードやけんいっか。』ってやるやん?」
って返しました。ほんと、私めんどくさがりですし、手際が悪いんです。まず、自分ができないことを勧めません(笑)
実は、授乳・離乳の支援ガイドには「ベビーフード」について掲載されていました。
離乳食は、手作りが好ましいが、ベビーフード等の加工食品を上手に使用することによ り、離乳食を作ることに対する保護者の負担が少しでも軽減するのであれば、それも一つの方法である。 ベビーフードは、各月齢の子どもに適する多様な製品が市販されている。手軽に使用が できる反面、そればかりに頼ることの課題も指摘されていることから、ベビーフードを利用する際の留意点を踏まえ、適切な活用方法を周知することが重要である。
留意点はありますが、離乳食が負担ならばベビーフードに頼っても良いかと思います。
終わりに
↑こんなツィッターも見かけ、胸が痛みました。ベビーフードを使っても育児って大変なんだし、「ラクしましょう」という言葉で傷ついてしまうんだと、反省です。「ラク」って、「楽しい」って書くので、私は育児を「楽しんで」欲しいと思っています。だから、私はもっと知識や経験を増やして提供してかなければ!と改めて思いました。
「こうあるべき」「ふつうさぁ〜」という言葉に傷つかないで。それはその人の価値観ですし、私たちが一人一人違うように、子どもの成長も一人一人違いますし、母親も一人一人違うのです。
「離乳食どうしよ〜。」より、「今日子どもが!!気付いたら座ってた!!!」みたいな子どもの成長を楽しんでください。
<参考文献>
1)瀬尾智子「離乳食(補完食)について」『助産雑誌』第73巻 第11号,医学書院,2019年,p928-932
2)鈴木俊治「周産期の最新情報 授乳・離乳支援ガイド改定のポイント」『ペリネイタルケア』第38巻 第10号,メディカ出版,2019年,p78(998)-82(1002)
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