第13回 妊娠⑥ 妊婦健診-1

はじめに

 今回は妊娠中に行われる「妊婦健診」についてお話しようと思います。

「妊婦健康診査」-いわゆる妊婦健診(にんぷけんしん)・妊健(にんけん)は正常経過の観察と異常の抽出が目的です。母子保健法という法律で全ての妊婦が健康診査を受けることが義務付けられています。

妊娠は病気ではありませんが妊娠により高血圧になったり、糖尿病になったりすることがあり、妊婦さんの体に影響を与えることがあります。また、胎児(赤ちゃん)に異常が見つかれば生まれてくる赤ちゃんに対応できる病院でフォローを受けるなど、妊婦さんと赤ちゃんの命を守るためには必要なことなのです。

今回は妊婦健診の回数と助成についてお話しします。
健診は語れば長いので、2回以上に分けて説明していきます。

妊婦健診の回数と助成

妊婦健診が始まるのは、分娩予定日が確定し、母子手帳交付後からになります。

母子手帳は各市町村の保健福祉センターで専門職が交付となると思いますが、各自治体によって交付方法が違うかと思いますので、受診したクリニックもしくは各地自体のホームページや問い合わせにて確認しましょう。

妊婦健診の回数は、
妊娠初期〜妊娠23週までは、4週間に1回
妊娠24週〜妊娠35週までは、2週間に1回
  妊娠36週〜分娩までは、1週間に1回
で行われています。そのため、妊婦健診は14回前後。

妊婦健診は、「健康診査」であるため保険適応ではなく自己負担となりますが、国や市町村の公費負担により14回分の妊婦健診助成券も母子手帳と同時に交付されます。
 この妊婦健診の助成券は、基本的な健診検査だけでなく、貧血の有無を確認する検査や感染症、血液型など時期に応じた検査の助成もしてくれます。

ただし、妊婦健診の定番で、おそらくみなさんが楽しみにされている超音波検査(エコー検査)の助成は、自治体によって2〜4回と違います。あまり気にしていなかったのですが、私が住んでいる市と近くの政令指定都市は2回で、関西の某都市は4回と助成が違うことに驚いています。(笑)

超音波検査については、これも助成以外は自己負担となりますが、病院やクリニックによっては超音波検査費用がかかるところ、かからないところがあり、値段も様々なようです。以前勤めていた病院でこれでトラブルがあったことがあります・笑

あと、気をつけて欲しいのは、
助成券は交付された市での助成となりますので、里帰り出産先で使えないことがあります!里帰り先の自治体によっては使える場合もありますが、使えない場合は一度自己負担して出産後に住民票がある自治体に申請することで健診費用が返還され(償還払い)ます。上限や申請期限が決まっていますので、各自治体のHP等で確認しましょう。

妊婦健診回数多い日本

 日本は妊婦健診回数が14回で、フィンランド、ノルウェー、アメリカなどと同様に妊婦回数が多い国に属しています。アメリカの妊婦健診についてちょっとネット検索してみましたが、同じように14回くらいのよう。ヨーロッパのオランダは12回、フランスは7回、スイスは3〜4回らしいです。3~4回とか、私の感覚からすると1回の健診の責任がすごい重いし、見逃したらどうするんだ、とちょっと怖いです。
ただ、日本みたいに毎回超音波検査している病院は稀だそうです。イギリスから日本に帰国された妊婦さんも「イギリスとエコー回数が違う」と言っていました。エコー検査が多いので異常も発見されやすいのでフォローされやすい、と思うんですが。

妊婦健診の回数に関する研究で、先進国の研究では妊婦健診の回数を8回に減らした場合、発展途上国では妊婦健診の回数を5回以下に減らした場合の効果と安全性について研究がいくつか行われていています。
 発展途上国では、妊婦健診の回数が減ったことで周産期死亡(妊娠満22週以降の死産と生後7日以内の新生児死亡)率が高くなる結果がでたそう。先進国ではそんな結果は出なかったよう。栄養状態、金銭的な問題や医療機関へのアクセスも関与しているんでしょうか。
 ただ、先進国、途上国を問わず妊婦健診回数が減ることで、妊婦の満足度が下がることが観察されたとのことでした。
 妊婦健診でエコー検査する時は、ご主人さんと一緒に来られて嬉しそうにしていたり、上の子も楽しそうにエコーみていたりしてますもんね。また、先生や助産師への質問もあります。
「助産師さん、先生がくれたエコー写真をくれたのはいいけど、この写真の意味がわからない。」
と言われたので、本を用いて説明したことがあります。
なんで背骨の写真をあげるんや、顔にしてあげえや(ぼやき)
 妊婦健診は母体・胎児の異常発見だけでなく、妊婦の不安解消や赤ちゃん(胎児)の成長も実感できます、そこは日本に生まれてよかった〜と思います。
いつ産むんでしょう、私。

2013年の日本の妊産婦死亡率は出産10万人に対して4人,
1950年の日本の妊産婦死亡率は出産10万に対し、161人。
ちなみにアフリカのケニアでは、
2004年のデータで妊産婦死亡は出産10万に対して43人。
なんと半世紀以上前の日本の妊産婦死亡率が今の発展途上国よりめちゃ高い。

どれだけ日本の産婦人科に携わる人、頑張ってくださったんですか。

そして日本の周産期死亡率は出生1000人に対して3人で,アメリカは7人。
これも先人たちの努力の結果だと思います。

 あまりにも亡くなる妊産婦が減ったので、お産は安全と思われるかもしれませんがそうではありません。健診による異常の抽出と医療体制が整っているからだと私は思います。

みなさん、ちゃんと健診いきましょうね⭐️
次回は健診内容について説明します。

<参考>
1)http://llstation.com(閲覧日:2019年11月15日)
2)森臨太郎・森亨子 著『ほんとうに確かなことから考える 妊娠・出産の話-コクランレビューからひもとく』医学書院,2018年

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