第20回 出産② 会陰マッサージ

はじめに

 「会陰(えいん)マッサージ」について病院や助産院の助産師さんから説明を受けて、実施している方、実施した方もいるでしょう。「会陰(えいん)」とは、狭義的には外陰部と肛門の間を指します、膣と肛門の間の皮膚部分ですね。
今回は会陰マッサージの目的と方法、効果についてお話します。

会陰マッサージの目的

 会陰マッサージの目的は、ずばり

会陰損傷の予防です。

 経膣分娩時を経験する多くの女性に会陰裂傷、会陰切開などの会陰損傷が生じています。正期産の赤ちゃんの頭の周りの大きさ(直径)がだいたい32〜33cmです。それを聞いただけでゾッとされるかもしれません。

 助産師は赤ちゃんがゆっくり降りてくる様、また会陰の部分に負担がかからない様に姿勢を工夫したり、赤ちゃんがゆっくり出てくる様にコントロールすることがあります。それでも自然に裂傷が入ることがありますし、赤ちゃんが苦しそうだから早く出すために切開を入れて、赤ちゃんを出しやすくすることもあります。

 妊婦さんができるセルフケアとして、「会陰マッサージ」があります。妊娠期に会陰部分を植物油(キャリアオイル)を用いてマッサージし、会陰組織の柔軟性を高めることができます。ですが、会陰裂傷を100%防ぐことはできません。

会陰マッサージの方法

 会陰マッサージは妊娠34週から行いますが、マッサージでお腹が張ったり安静の指示が出ているからは妊娠36週までは控えましょう。

 マッサージで使えるオイルは、「アーモンドオイル」や「オリーブオイル」、「カレンデュラオイル」などの植物油です。ネットや専門店で販売されています。アレルギーがないか事前にパッチテストを行うことをお勧めします。
 
 膣部分を触りますので、マッサージを行う手は清潔にしてください。入浴時が良いでしょう。オイルを指につけたら親指を膣内にいれ、残りの4本の指で会陰部の4時〜8時方向をマッサージします。(1日1回、1回5~10分)
 最初は痛みや灼熱感などの感想が聞かれますが、2〜3週間すると痛みが減少し、マッサージが行いやすくなります。

会陰マッサージの効果

会陰損傷への効果

 会陰マッサージの効果についての研究では、妊娠34週から4〜10分会陰マッサージを実施した場合、会陰マッサージを実施しなかった場合を比較して、初産婦においては縫合を必要とする会陰損傷のリスクを9%減少させ、会陰切開のリスクを16%減少させると言う結果が得られています。
 現場でも初産婦で縫合が必要なかった産婦さんに話を聞くと「会陰マッサージをしていた。」と言う方はいらっしゃいました。

 経産婦では、会陰損傷の発生頻度の効果は認められませんでしたが、産後3ヶ月時点での会陰の痛みの発生が55%減少したとのことでした。

 マッサージを行う回数による効果を比較すると、平均1.5未満回/週の会陰マッサージを実施した場合、縫合が必要な会陰損傷のリスクは16%減少し、会陰切開のリスクは28%減少しましたが、平均1.5回〜3.5回/週、3.5回/週の会陰マッサージを実施した場合と比べても明らかな減少認められないことから、会陰マッサージの回数が多ければ良いというわけではない様です。

その他の効果

 「会陰マッサージ」を受容(受け入れること)についての研究では、79%の女性が会陰マッサージを次の出産でも実施したいと回答し、87%の女性が他の妊婦にも勧めたいと回答していることから受け入れが良好だったようです。

 日本女性を対象とした調査でも会陰マッサージを出産まで継続した女性は途中で中断した女性よりも出産準備への効果や出産時の効果を感じていたことや、初産婦においては会陰マッサージを実施た女性は実施しなかった女性と比べ、「自分らしいお産」に対する自己効力感が高かったことが報告されています。

終わりに

 「会陰マッサージは怖い。」と言われたことがあります、私の説明不足で怖がらせたのかもしれませんが(苦笑)、怖がることを無理にする必要はないかと思います。
 
 ですが、調べていく内に会陰マッサージをした人のお産への自己効力感が高かったということから、出産にむけてネガティブなことを考えるより「出産に向け自分でできる何か」を探している人がいたら、と思い今回書いてみました。よろしければ参考にしてください。

 なお分娩に立ち会っていると「あ、これは絶対に切れない」というふわふわの柔らかい会陰を持つ方にお会いします、経産婦さんばかりですけど。特にマッサージはされていない様子でしたが、あの会陰どうやったらなれるだろう、と思いつつその秘訣を聴けずにいます(笑)

<参考文献>
1)竹内翔子執筆「特集 習慣化されたケアをエビデンスから検証する 会陰裂傷は会陰マッサージで予防できる?」『助産雑誌 第72巻第12号』,p936-937,医学書院,2018
2)竹内翔子執筆「第5章 妊娠中のセルフケアに関する質問 Q37妊娠中に会陰マッサージをすると、会陰裂傷を防げますか」『エビデンスをもとに答える妊産婦・授乳婦の疑問92』,p90-91南江堂,2015
3)カーティー菅田倫子著『現役助産師がすすめる 母と子のアロマセラピー&ベビーマッサージ』,ガイアブックス,2010

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