もくじ
はじめに
「フクロウの助産師」Twitterアカウントを作っています。そこで皆さんどんなことで悩んでいるのかなと眺めさせていただいていますが、授乳のトラブルがチョコチョコ聞かれるので、今回は直接授乳(breastfeeding,直母)について2回ほどに分けて説明していこうと思います。
BFHで働いて気づいたこと
そもそもBFHって何?
BFH(赤ちゃんに優しい病院)をご存知でしょうか。
WHOは「母乳育児成功のための10カ条」を提唱しています。
母乳育児成功のための10カ条(10ステップ)
1a.母乳代替品のマーケティングに関する国際規準(WHOコード)と世界保健総会の決議を遵守する
1b.母乳育児の方針を文章にして、施設の職員やお母さん・家族にいつでも見られるようにする
1c.母乳育児に関して継続的な監視およびデータ管理のシステムを確立する
2. 医療従事者が母乳育児支援に十分な知識、能力、技術を持っていることを確認する
3. すべての妊婦・その家族に母乳育児の重要性と方法について話し合いをする
4. 出生直後から、途切れることのない早期母子接触をすすめ、出生後できるだけ早く母乳が飲ませられるように支援する
5. お母さんが母乳育児を始め、続けるために、どんな小さな問題でも対応できるように支援する
6. 医学的に必要がない限り、母乳以外の水分、糖水、人工乳を与えない
7. お母さんと赤ちゃんを一緒にいられるようにして、24時間母子同室をする
8. 赤ちゃんの欲しがるサインをお母さんがわかり、それに対応できるように授乳の支援をする
9. 哺乳びんや人工乳首、おしゃぶりを使うことの弊害についてお母さんと話し合う
10. 退院時には、両親とその赤ちゃんが継続的な支援をいつでも利用できることを伝える
この「母乳育児成功のための10カ条」を長期にわたって尊守し、実践する産科施設を「赤ちゃんにやさしい病院(Baby Friendly Hospital)」として認定されています。現在、日本国内では66施設が認定されています。(2019年8月現在)中には基準を満たせずにこの認定を更新できない施設もあるので、審査は厳しいようです。
これまで色んな病院・クリニックに勤めてきましたが、やはり一番母乳育児支援頑張っているな、と思ったのは私がいたBFHでした。
授乳姿勢が違う
おそらく、多くの授乳しているママさんたちは赤ちゃんを横に抱っこする「横抱き」で授乳し、授乳クッションを用いているのではないかと思います。
私がいた施設は違いました。
ほとんどの褥婦さんは、「縦抱き」で授乳クッションは使っていませんでした。だからか授乳室にいる褥婦さんたちの姿勢がよかったんです。
ここのBFHだけかと思いましたが、赤ちゃんがNICU(新生児集中治療室)に入院して施設で授乳ができなかった褥婦さんが、赤ちゃんが退院し、母子ともに来院されました。赤ちゃんが入院していた病院もBFH認定を受けていたのですが、授乳は横抱きでしたが授乳クッションを使わず、赤ちゃんをしっかりと片手で抱き上げ身体に密着させていて姿勢がとてもよかったです。授乳はNICUのスタッフより教えてもらったそうです。
故に私は授乳時の姿勢が綺麗になるように授乳時はサポートしています。
では次から授乳の方法について説明します。

吸着(ラッチ・オン)
赤ちゃんにおっぱいを咥えさせることを吸着(ラッチ・オン)と言います。
上手な赤ちゃんもいれば、寝てしまったり、ちょっと口開ける練習が必要だね、って赤ちゃんもいます。個性です。
赤ちゃんが上手く吸っていても乳頭を深く入れられていいなければ、乳頭が浅く吸われ(しかも浅いとおっぱいの刺激が不十分なことも)、乳頭に傷ができる原因となります。傷が出来たら痛いですよね、そして身体が逃げちゃうとまた浅くなり、悪循環になってしまいます。
ですから、しっかりと赤ちゃんに深く咥えさせなければいけません。
吸着の方法

吸着の際は、授乳したい方のおっぱいを図のように支えます。ポイントは親指を乳頭の上にあて、上方向に少し引っ張り、乳頭をやや持ち上げます。
赤ちゃんを支える際は、一番ぐらつきやすい首のあたりに褥婦さんの掌が当たるように支えます。掌から腕で赤ちゃんの体を褥婦さんと密着させるように抱っこします。
そして、赤ちゃんのお口が開いたタイミング(赤ちゃんは口元を刺激すると、おっぱいを咥えようと口があきます)その際、よくあるのが「褥婦さんが赤ちゃんに身体を寄せようとする」のですが、それでは姿勢が「前屈み」になりますので、そうではなく、「赤ちゃんを褥婦さんの方に引き寄せ」ます。そして乳頭を上方向から赤ちゃんのお口に向かって入れると深く入りやすいです。自分の親指まで入りそうなくらいなるべく深く咥えさせるイメージです。入っちゃっても抜けばいいんですけどね。
赤ちゃんが深く咥えると、口が上唇、下唇がほぼ180度開いた、朝顔の花びらのようになります。
浅吸いになったら
上手く吸っていると、乳頭に傷がなければ乳頭に痛みはありません。傷があると最初は痛みますが、その後は痛くないです。子宮が収縮する痛みはあるかも知れませんが。もし浅く吸っていると乳頭が痛くなり、そのまま傷になることがあります。もし乳頭が痛いなら、吸着し直した方がいいです。
赤ちゃんから乳頭を外す時にも注意が必要です。赤ちゃんは乳頭を外そうとすると再び乳首を吸い出し、痛い思いをされた人はいませんか?
おっぱいを吸うとき、赤ちゃんの口の中は陰圧になります。ですから、お口から外す際は、必ず赤ちゃんのお口に褥婦さん自身の指(小指で可)を入れて圧を抜かないと乳頭を外す時点で浅くなるのに赤ちゃんが乳首が引っ張られてしまいます。これが上手くいかなくて、乳頭と乳輪の境目である乳頚部に亀裂が入る方が多いです。赤ちゃんの口に指を入れることをためらう褥婦さんがいますが、赤ちゃんはそんなことわからないので、自分の乳首は自分で守りましょう。
他にも浅くなる原因
他にも浅くなる原因として姿勢があります。先ほど「授乳姿勢が綺麗だった。」と言う話をしましたが、皆さん、授乳クッションを使わずにしっかりと赤ちゃんと体を密着させていました。授乳クッションが悪い、と言うわけではありませんが、授乳クッションに赤ちゃんを任せすぎると褥婦さんから赤ちゃんの身体が離れて浅くなってしまうことがあります。まだ、赤ちゃんは自分で姿勢を保つことはできませんから、しっかりと赤ちゃんを引き寄せてください。赤ちゃんがしっかり吸着できれば、乳房を支えていた腕を赤ちゃんの支えに使っていいです。
次回について
次回は授乳姿勢について書きます。様々な抱き方を覚えておくと、乳頭の傷トラブルにも対応できますし乳腺炎の時にも役立ちます。
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