助産師、ベビーシッターになる③

はじめに

久しぶりの更新となりました。みなさん、お元気でしたか。
私は、ベビーシッターとして開業して半年以上が過ぎました。
実は中の人、7月の後半ごろより、福岡市の産後ヘルパー派遣事業に携わっております。生後6ヶ月未満のお子様がいて、福岡市に住民票がある、日中に家族等から家事や育児の支援が受けられない方が対象となっています。そちらに参加したお陰でご依頼が増えました。

助産師がベビーシッターとしてお宅に訪問する強みは、私は母乳育児支援だと思います。以前、私は入院中の産後ケアが不十分であることを書きました。それがこの開業にもつながったのですが、

実は、この半年の中で退院後すぐから継続的に関わらせていただくことで、結果母乳育児確立につなげることができた、ということがありました。関わらせていただいた方に許可をいただき、どのような支援を行ったのか、何を考えていたのか、書いていこうと思います。

事例

Aさん

今回登場するのはAさん、Aさんは今回2回目の出産です。
上のお子さんは2歳です。Aさんとは妊娠期から関わりを持っていて、第1子の時の産後の様子などを本人から聞いていました。
Aさんは産後4日目で退院し、私が関わったのは6日目からでした。
Aさんとは訪問前からメッセージでやりとりをしていました。

Aさんによると、
●産後3日目で直母量が約20gだったので母乳だけあげている。
●今回生まれた子はよく寝る。起こしても起きない、授乳が4時間空くことも。
●おしっこはでたり、出なかったり。


ということでした。その時、私は「おや?」と感じました。
私はAさんから第1子の母乳の経過を聞いていました。Aさんは第1子は母乳栄養ではなく、混合からミルクに変わられていました。経産婦さんですから、初産婦さんに比べて早いのはわかるのですが、母乳だけでいけると判断するにはちょっと時期尚早だな、と感じたのと、赤ちゃんの様子から体重が増加していない、もしくは減少していることは想像できました。
Aさん自身も心配していたので、訪問する日は、赤ちゃん用の体重計を持参することにしました。

赤ちゃんの体重が減っていた

訪問当日、赤ちゃん(以降Bちゃんとする)の様子を見ていると確かによく寝ていました。Bちゃんの体重測定をすると、やはり体重は退院時から30gほど減少していました。
沐浴を実施しましたが、どちらかというと活気がないように感じました。
(注意:産後ヘルパー事業では沐浴は実施できませんが、Aさんはベビーシッターとして別枠で予約を取られていたので、その時間で実施しています。)
Bちゃんの活気がなくなる原因として、黄疸も考えました。

黄疸の説明はこちらで書いています。

退院時の黄疸の値は決して低いとは言えませんでしたが、だからといって黄色過ぎというわけでもなく。どちらにしてもこのまま体重減少が続けば脱水で黄疸が強くなる可能性はあるな、と考えました。

じゃあ、ミルクをどんどんあげよう!
と判断するのはまだ早すぎるので、母乳をどれだけ飲んでいるのか測定しました。授乳の際は、咥えさせ方なども説明し、しっかり深く咥えるように援助を行いました。Bちゃんもしっかり吸っていたと思います。結果、直母量は25gでした。搾乳しても10〜20g程度。やはりミルクを補足する必要があるようです。

補足量をどう決めるか

赤ちゃんが飲む量を決める目安として
必要水分量=150〜200ml /kg /day
の考え方がありました。その考え方でいくと、150ml /kg /day(下限ライン)は、52.5ml×8回/dayとなります。
直母で25g飲めているなら、30〜40ml補足すれば体重増加につながるでしょう。ですが、そうすると、飲む母乳の量より多くなってしまいます。
「体重もガッツリ減っているわけじゃないしなぁ。」

その時、私は数年前に受講した宮城の堺武男先生の講義を思い出しました。
堺先生は、母乳育児支援では高名な方で数年前に福岡で講演された時、受講者からの質問で補足量のことを仰っていました。
「僕は、まずは最低量から始める」
今回は25gでも搾乳の量からして母乳は30〜40くらいは出ているし、Aさんは次の日も予約をとられていて、連日体重チェックができるので最低量の20ml /回から始めることにしました。
他にもAさんにお願いしたのは、4時間空くことなく、3時間で必ずあげることもお願いしました。

もしかしたら、3時間に拘らず頻回に吸わせればいいんじゃない?
と思った医療者の方がいるかもしれません。
私はそれはAさんにとって難しいと考えました。なぜならば、Aさんには2歳の子がいます。Aさん同様、Aさんの2歳のお子さんとも長く関わっていたので、性格もある程度つかんでいます。また、Aさんの夫は帰りが遅いため、夕方は私がいない時間は一人で頑張っていらっしゃるからです。

Aさんもミルクをあげることは納得されました。

早速、20mlのミルクをBちゃんに飲ませたところ、Bちゃんは上手にグビグビミルクを飲みました。そして驚いたのが、これまでは授乳の前は泣いてこないと言っていたBちゃんが、次の授乳の際、授乳の前に泣き始めたのです。

補足を開始して

Aさんのお宅に訪問し体重測定を行ったところ、しっかりと体重が増加していました。Bちゃんも前日に比べ活気良好でした。この時私は、毎回ミルクを補足しなくても良さそう、とお伝えしました。

毎日ではなく、1日や2日空くときもありましたが、Aさんは毎日母乳回数や赤ちゃんのおしっこやうんちの記録を残していて、母乳育児を頑張っていらっしゃいました。そのお陰か、おっぱいに血管が浮くようになったり、前よりもおっぱいが大きくなるなど、まるで産後すぐのような変化を始めました。それに伴い、母乳量も増えていきました。

補足を止めるときがきた

関わるようになって1週間、Aさん2週間検診で赤ちゃんの体重増加量が少ないと言われ(20g /日)、ミルク補足40ml×4回/dayするように言われます。
そして、1週間後に病院で体重チェックとなりました。
「あらー、申し訳ない。」
と思ったのですが、Aさんは産後6日目で体重が減少したことを言っていなかったようです。つまり、退院時の体重と現在の体重で体重増加量が計算されたみたいなのです。そりゃ増えてないよね。 まぁ病院側が指示してきたならやってみようと授乳後に40ml補足しましたが、Bちゃん授乳前に起きてこないのと、授乳と授乳の間で嘔吐していたので、「Bちゃんには40mlは多い。」とAさんと私で話し合い、20ml×8回にしましょうということになりました。
そして次の日、体重測定したら100g以上増えていました。この時は、体重計がおかしいのではないか、と料理用のスケールまで持ち出して同じものを測定したくらいです。料理用のスケールと誤差はありませんでした。
さらに2日後には、Aさんから「ミルクを足すとBが起きてこない。」と訴えがあり、母乳測定量もしっかりあって、その日のBちゃんの体重も前日に比べて100g増えていたので、

もうミルクは必要ないよ。

という判断を行いました。Aさんの産後16日目のことです。
その後も体重チェックでも50g 以上/day増えていたとのことで、母乳のみでOKと病院側からも言われたそうです。その後も継続的に関わっていますが、Bちゃんは活気良好でうんちもおしっこも出ています。1ヶ月健診も体重がしっかり増えていたと、喜びのメッセージをいただきました。

在宅での継続支援の重要性

私も臨床で働いていた頃、こんなに産後に関われることはありませんでした。
今回、このAさんの症例を通して産後の継続的な支援が重要であることを身を持って知ることができました。
病院に通院する、もしくはディケアという選択肢もあるでしょう。ですが、例えば上の子がどんな子で、パートナーの様子、家でどんな生活をしているかイメージができますか?病院よりも私は在宅訪問の方がイメージできました。

しかし、Aさん以外にも産後の支援を行なっていますがAさんほどうまく行った症例はないです。それは、他のご家庭では上のお子さんの年齢的に育児サポートをすることが限界であったり、私自身の予約枠が空いていないことが多いからです。とにかく、私がいるマッチングサイト内に産後サポートをできる人が少ないんですよね。0歳が見れるベビーシッターさんは少ないですし、産後サポートができるシッターさんはもっと限られる。

ベビーシッターは看護師さんでも開業できるから産婦人科経験のある看護師さんいないかなぁ。

と思う今日この頃です。

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